ジャン・クリストフ

ロマン・ローラン

豊島与志雄訳




  前がき
『ジャン・クリストフ』の作者さくしゃロマン・ローランは、西暦せいれき千八百六十六ねんフランスにまれて、現在げんざいではスウィスの山間さんかんんでいます。純粋じゅんすいのフランスじんすじをうけたひとで、するどい知力ちりょくをもっています。世界中せかいじゅう人々ひとびとがみなおたがいあいしあい、そして力強ちからづよきてゆくこと、それがかれ理想りそうであり、そしてかれはいつも平和へいわ自由じゆう民衆みんしゅうとの味方みかたであります。
 これまでのかれ仕事しごとは、いろいろな方面ほうめんにわたっています。だい一に、五つの小説しょうせつがあり、そのなかで『ジャン・クリストフ』は、いちばんながいもので、そしていちばん有名ゆうめいです。ここにかかげたのはそのうちの一せつです。だい二に、十あまりの戯曲ぎきょくがあり、そのなかで、フランス革命かくめいについてのものと信仰しんこうについてのものとが、おもなものです。だい三に、十ばかりの偉人いじん伝記でんきがあり、そのなかで、ベートーヴェンとミケランゼロとトルストイとの三つの伝記でんきは、もっとも有名ゆうめいです。だい四に、音楽おんがく文学ぶんがく社会問題しゃかいもんだいやそのほかにいろいろなものについておおくの評論ひょうろんがあります。
 かれはいま、スウィスの田舎いなかしずかな生活せいかつをしながら、仕事しごとをしつづけています。そして人間にんげんはどういうふうきてゆくべきかということについて、かんがえつづけています。(訳者)


 クリストフがいる小さなまちを、ある晩、流星りゅうせいのように通りすぎていったえらい音楽家おんがくかは、クリストフの精神せいしんにきっぱりした影響えいきょうを与えた。幼年時代ようねんじだいを通じて、その音楽家の面影おもかげは生きた手本てほんとなり、かれはそのうえをすえていた。わずか六歳の少年しょうねんたる彼が、自分もまた楽曲を作ってみようと決心けっしんしたのは、この手本にもとづいてであった。だがほんとうのことをいえば、かれはもうずいぶん前から、らずらずに作曲さっきょくしていた。彼が作曲しはじめたのは、作曲していると自分じぶんで知るよりもまえのことだったのである。
 音楽家おんがくかの心にとっては、すべてが音楽おんがくである。ふるえ、ゆらぎ、はためくすべてのもの、りわたったなつの日、風の夜、ながれる光、星のきらめき、雨風あめかぜ小鳥ことりの歌、虫の羽音はおと樹々きぎのそよぎ、このましいこえやいとわしい声、ふだんきなれている、おと、戸の音、夜のしずけさのうちに動脈どうみゃくをふくらます血液けつえきの音、ありとあらゆるものが、みな音楽おんがくである。ただそれを聞きさえすればいいのだ。ありとあらゆるものがかなでるそういう音楽おんがくは、すべてクリストフのうちにりひびいていた。かれたりかんじたりするあらゆるものは、みな音楽おんがくわっていた。かれはちょうど、そうぞうしいはちのようだった。しかしたれもそれに気づかなかった。彼自身かれじしんづかなかった。
 どの子供こどもでもするように、彼もたえず小声こごえうたっていた。どんなときでも、どういうことをしてる時でも、たとえば片足かたあしでとびながら往来おうらいを歩きまわっている時でも――祖父そふの家のゆかにねころがり、両手りょうてで頭をかかえて書物しょもつ挿絵さしえに見入っている時でも――台所だいどころのいちばんうす暗い片隅かたすみで、自分の小さな椅子いすすわって、夜になりかかっているのに、なにを考えるともなくぼんやり夢想むそうしている時でも――彼はいつも、くちじ、ほほをふくらし、くちびるをふるわして、つぶやくような単調たんちょうおとをもらしていた。幾時間いくじかんたっても彼はあきなかった。はははそれを気にもとめなかったが、やがて、たまらなくなって、ふいにしかりつけるのだった。
 そのなか夢心地ゆめごこち状態じょうたいにあきてくると、彼はうごきまわっておとをたてたくてたまらなくなった。そういう時には、楽曲がっきょくつくり出して、それをあらんかぎりのこえで歌った。自分の生活せいかつのいろんな場合ばあいにあてはまる音楽をそれぞれこしらえていた。朝、家鴨あひるの子のようにたらいの中をかきまわす時の音楽おんがくもあったし、ピアノの前の腰掛こしかけに上って、いやな稽古けいこをする時の音楽も――またその腰掛こしかけから下る時の特別とくべつ音楽おんがくもあった。(この時の音楽おんがくはひときわかがやかしいものだった。)それから、はは食卓しょくたくに食物を運ぶ時の音楽おんがくもあった――その時、彼は喇叭らっぱの音で彼女をせきたてるのだった。――食堂から寝室しんしつおごそかにやっていく時には、元気げんきのいい行進曲マーチそうした。時によっては、二人ふたりおとうとといっしょに行列ぎょうれつをつくった。三人は順々じゅんじゅんにならんで、ばってねりあるき、めいめい自分の行進曲マーチをもっていた。もちろん、いちばん立派りっぱなのがクリストフのものだった。そういう多くの音楽おんがくは、みなぴったりとそれぞれの場合ばあいにあてはまっていた。クリストフはけっしてそれを混同こんどうしたりしなかった。ほかの人ならたれだって、まちがえるかもれなかった。しかし彼は、はっきりと音色ねいろ区別くべつしていた。
 ある日、彼は祖父そふいえで、そりくりかえってはらをつきし、かかと調子ちょうしをとりながら、部屋へやの中をぐるぐるまわっていた。自分でつくったうたをやってみながら、気持きもちわるくなるほどいつまでもまわっていた。祖父そふはひげをそっていたが、そのをやすめて、しゃぼんだらけな顔をつきし、彼の方をながめていった。
なにを歌ってるんだい。」
 クリストフはらないと答えた。
「もう一やってごらん。」と祖父そふはいった。
 クリストフはやってみた。だが、どうしてもさっきのふしが思い出せなかった。でも、祖父そふから注意ちゅういされてるのに得意とくいになり、自分のいい声をほめてもらおうと思って、オペラのむずかしいふし自己流じこりゅうにうたった。しかし祖父そふきたいと思ってるのは、そんなものではなかった。祖父そふは口をつぐんで、もうクリストフに取りあわないふうをした。それでもやはり、子供こどもとなり部屋へやで遊んでいる間、部屋へやの戸を半分はんぶん開放あけはなしにしておいた。
 それから数日後すうじつごのこと、クリストフは自分のまわりに椅子いすをまるくならべて芝居しばいへいった時のきれぎれなおもをつなぎあわせて作った音楽劇おんがくげきえんじていた。まじめくさった様子で、芝居しばいで見た通り、三拍子曲ミニュエットふしにあわせて、テーブルのうえにかかっているベートーヴェンの肖像しょうぞうに向かい、ダンスの足どりや敬礼けいれいをやっていた。そして爪先つまさきでぐるっとまわって、ふりむくと、半開はんびらきのドアあいだから、こちらを見ている祖父そふの顔が見えた。祖父に笑われてるようながした。たいへんきまりがわるくなって、ぴたりとあそびをめてしまった。そして窓のところへ走っていき、ガラスに顔をしあてて、何かを夢中むちゅうながめてるようなふうをした。しかし、祖父そふは何ともいわないで、彼の方へやって来ていてくれた。クリストフには祖父そふ満足まんぞくしているのがよくわかった。彼は小さな自尊心じそんしんから、そういう好意こういがうれしかった。そしてかなり機敏きびんだったので、自分じぶんがほめられたのをさとった。けれども、祖父そふが自分のうちの何を一番ほめたのか、それがよくわからなかった。戯曲家ぎきょくかとしての才能さいのうか、音楽家としての才能さいのうか、歌い手としての才能か、または舞踊家ぶようかとしての才能か。彼はそのいちばんおしまいのものだと思いたかった。なぜなら、それを立派りっぱ才能さいのうだと思っていたから。
 それから一週間しゅうかんたって、クリストフがそのことをすっかりわすれてしまった頃、祖父そふはもったいぶった様子ようすで、彼に見せるものがあるといった。そしてつくえをあけて、中から一さつ楽譜帖がくふちょうをとり出し、ピアノの楽譜台がくふだいにのせて、いてごらんといった。クリストフは大変困ったが、どうかこうか読みいていった。その楽譜がくふは、老人ろうじんの太い書体しょたいで特別にねんをいれて書いてあった。最初さいしょのところには輪や花形はながたかざりがついていた。――祖父はクリストフのそばにすわってページをめくってやっていたが、やがて、それは何の音楽おんがくかとたずねた。クリストフはくのに夢中むちゅうになっていて、何をいてるのやらさっぱりわからなかったので、知らないとこたえた。
をつけてごらん。それがわからないかね。」
 そうだ、たしかに知っていると彼は思った。しかし、どこで聞いたのかわからなかった。……祖父そふは笑っていた。
かんがえてごらん。」
 クリストフはあたまをふった。
「わからないよ。」
 ほんとうをいえば、おもいあたることがあるのだった。どうもこの節は……というがした。だがそうだとは、いいきれなかった……いいたくなかった。
「お祖父じいさん、わからないよ。」
 彼は顔をあからめた。
「ばかな子だね。自分じぶんのだということがわからないのかい。」
 たしかにそうだとは思っていた。けれどはっきりそうだとくと、はっとした。
「ああ、お祖父じいさん。」
 老人ろうじんは顔をかがやかしながら、クリストフにその楽譜がくふ説明せつめいしてやった。
「これは詠唱曲アリアだ。火曜日かようびにお前が床にねころんでうたっていたあれだ。それから、行進曲マーチ先週せんしゅうだったね、もう一度やってごらんといっても、おもいだせなかったろう、あれだ。それから三拍子曲ミニュエット肱掛椅子ひじかけいすの前で踊っていた時の歌だ。……みてごらん。」
 表紙には、見事な花文字はなもじで、こう書いてあった。

少年時代の快楽かいらく――詠唱曲アリア三拍子曲ミニュエット円舞曲ワルツ行進曲マーチ。ジャン・クリストフ・クラフト作品さくひん※(ローマ数字1、1-13-21)

 クリストフはがくらむような気がした。自分じぶんの名前、立派りっぱ表題ひょうだい、大きな帖面ちょうめん、自分の作品さくひん! これがそうなんだ。……彼はまだよく口がきけなかった。
「ああ、お祖父じいさん! お祖父じいさん!……」
 老人ろうじんは彼を引寄ひきよせた。クリストフはそのひざ身体からだげかけ、そのむねに顔をかくした。彼はうれしくて真赤まっかになっていた。老人ろうじんは子供よりもっとうれしかったが、わざと平気へいきな声で――感動かんどうしかかってることに自分じぶんでも気づいていたから――いった。
「もちろん、お祖父じいさんが伴奏ばんそうをつけたし、また歌の調子ちょうし和声ハーモニーを入れておいた。それから……(彼はせきをした)……それから、三拍子曲ミニュエット中間奏部トリオをそえた。なぜって……なぜって、そういう習慣しゅうかんだからね。それに……とにかく、悪くなったとはおもわないよ。」
 老人はそのきょくいた。――クリストフは祖父そふと一しょに作曲さっきょくしたことが、ひどく得意とくいだった。
「でも、お祖父じいさん、お祖父さんの名前なまえも入れなきゃいけないよ。」
「それには及ばないさ。おまえよりほかの人に知らせる必要ひつようはない。ただ……(ここで彼の声はふるえた)……ただ、あとで、お祖父じいさんがもういなくなった時、お前はこれを見て、年とったお祖父じいさんのことを思い出してくれるだろう、ねえ! お祖父じいさんをわすれやしないね。」
 あわれな老人ろうじんは思ってることをすっかりいえなかった。かれは、自分よりも長い生命いのちがあるにちがいないと感じたまご作品さくひんの中に、自分のまずい一節ひとふしをはさみ込むという、きわめてつみのないたのしみを、おさえることができなかったのである。けれども、今から想像そうぞうされるまご光栄こうえいに一しょに加わりたいというそのねがいは、ごくつつましいあわれなものだった。彼は自分がまったく死にうせてしまわないようにと、自分の思想しそう一片いっぺんを自分の名もつけずに残しておくだけで、満足まんぞくしていたのである。――クリストフは、ひどく感動かんどうして、老人ろうじんの顔にやたらに接吻せっぷんした。老人はさらに心を動かされて、彼のあたまを抱きしめた。
「ねえ、おもしてくれるね。これから、お前が立派りっぱ音楽家おんがくかになり、えらい芸術家げいじゅつかになって、一家の光栄こうえい、芸術の光栄、祖国そこく光栄こうえいとなった時、お前が有名になった時、その時になって、思い出してくれるだろうね、おまえ最初さいしょに見出し、お前の将来しょうらい予言よげんしたのは、このとしとったお祖父じいさんだったということをね……」

 その以来いらい、クリストフはもう作曲家さっきょくかになったのだったから、作曲さっきょくにとりかかった。まだくことさえよく出来できないうちから、家計簿かけいぼかみをちぎりとっては、いろいろな音符おんぷを一生懸命しょうけんめいきちらした。けれども、自分じぶんがどんなことを考えているかそれをるために、そしてそれをはっきりきあらわすために、あまり骨折ほねおっていたので、ついには、何かかんがえてみようとするだけで、もう何も考えなくなってしまった。それでも彼は、やはり楽句がっく楽曲の一節)を組みたてようとりきんでいた。そして音楽の天分てんぶんがゆたかだったので、まだ何の意味いみも持たないものではあったけれど、ともかくも楽句がっくをこしらえ上げることができた。すると彼は喜びいさんで、それを祖父そふのところへ持っていった。祖父そふうれし涙をながし――彼はもう年をとっていたのでなみだもろかった――そして、素晴すばらしいものだといってくれた。
 そんなふうに、彼はすっかりあまやかされてだめになるところだった。しかしさいわいなことに、彼はまれつきかしこ性質せいしつだったので、ある一人の男のよい影響えいきょうをうけてすくわれた。その男というのは、ほかの人に影響えいきょうあたえるなどとは自分でも思っていなかったし、たれても平凡へいぼん人間にんげんだった。――それはクリストフの母親ははおやルイザの兄だった。
 彼はルイザとおなじように小柄こがらで、せていて、貧弱ひんじゃくで、少し猫背ねこぜだった。としのほどはよくわからなかった。四十をこしているはずはなかったが、見たところでは五十以上いじょうに思われた。しわのよった小さな顔は赤みがかって、人のよさそうなあおいろのさめかけた瑠璃草るりそうのような色合いろあいだった。隙間風すきまかぜがきらいで、どこででもさむそうに帽子ぼうしをかぶっていたが、その帽子をぬぐと、円錐形えんすいけいの赤い小さな禿頭はげあたまがあらわれた。クリストフとおとうとたちはそれを面白おもしろがった。かみの毛はどうしたのと聞いてみたり、父親ちちおやメルキオルの露骨ろこつ常談じょうだんにおだてられて、禿はげをたたくぞとおどしたりして、いつもそのことでかれをからかってあきなかった。すると小父おじはまっさきにわらいだし、されるままになって少しもおこらなかった。彼はちっぽけな行商人ぎょうしょうにんだった。香料こうりょう、紙類、砂糖菓子さとうがし、ハンケチ、襟巻えりまき履物はきもの缶詰かんづめこよみ、小唄集、薬類など、いろんなもののはいってる大きなこり背負せおって、村から村へとわたあるいていた。家の人たちは何度なんども、雑貨屋ざっかや小間物屋こまものやなどの小さな店をってやって、そこにおちつくようにすすめたことがあった。しかしかれこしをすえることが出来なかった。夜中よなか起上おきあがって、戸の下にかぎをおき、こりをかついで出ていってしまうのだった。そして幾月いくつき姿すがたを見せなかった。それからまたもどってきた。夕方ゆうがた、誰かが戸にさわるおとがする。そして戸が少しあいて、行儀ぎょうぎよく帽子ぼうしをとった小さな禿頭はげあたまが、人のいい目つきとおずおずした微笑びしょうと共にあらわれるのだった。「皆さん、今晩は。」とかれはいった。はいる前によくくつをふき、みんなに一人一人ひとりひとりとしの順に挨拶あいさつをし、それから部屋へやのいちばん末座まつざにいって坐った。そこで彼はパイプに火をつけ、をかがめて、いつものひどい悪洒落わるじゃれがすむのを、静かにつのであった。クリストフの祖父そふと父は、彼をあざけりぎみに軽蔑けいべつしていた。そのちっぽけな男がおかしくおもわれたし、行商人ぎょうしょうにんといういやしい身分に自尊心じそんしんきずつけられるのだった。彼等かれらはそのことをあからさまに見せつけたが、彼は気づかない様子ようすで、彼等に深い敬意けいいをしめしていた。そのため、二人の気持きもちはいくらかやわらいだ。ひとから尊敬そんけいされるとそれに感じ易い老人ろうじんの方は、ことにそうだった。二人はルイザがそばで顔を真赤まっかにするほどひどい常談じょうだんあびせかけて、それで満足まんぞくした。ルイザはクラフト家の人たちのすぐれていることを文句もんくなしにいつもみとめていたから、おっとしゅうと間違まちがっているなどとはゆめにも思っていなかった。しかし、彼女かのじょは兄をやさしく愛していたし、兄も口には出さないが彼女を大切たいせつにしていた。彼等は二人ふたりきりでほかに身寄みよりものもなかった。二人ふたりとも生活のためにひどく苦労くろうして、やつれはてていた。人知ひとしれずしのんできた同じようなくるしみとおたがいあわれみの気持きもちとが、悲しいやさしみをもって二人をむすびつけていた。きるように、楽しく生きるように頑固がんこに出来上ってる、丈夫じょうぶ騒々そうぞうしいあらっぽいクラフトの人たちの間にあって、いわば人生の外側そとがわはしっこにうち捨てられてるこの弱い善良ぜんりょう二人ふたりは、今までお互に一ことも口にはさなかったが、たがい理解りかいしあいあわれみあっていた。
 クリストフは子供こどもによく見られる思いやりのない軽率けいそつさで、父や祖父そふ真似まねをして、この小さい行商人ぎょうしょうにんをばかにしていた。おかしな玩具がんぐかなんかのように彼を面白がったり、わるふざけをしてからかったりした。それを小父おじ小さい行商人)はおちつき払って我慢がまんしていた。でもクリストフは、知らず知らずに彼をいてるのだった。第一に、思うままになるおとなしい玩具がんぐとして、彼がきだった。それからまた、いつもちがいのあるいいもの、菓子かしとかとかめずらしい玩具などを持っててくれるから、きだった。この小さい男がもどってると、思いがけなくなにもらえるので、子供たちはうれしがった。彼は貧乏びんぼうだったけれど、どうにか工面くめんして一人一人ひとりびとり土産物みやげものを持っててくれた。また彼は家の人たちのいわい日を一わすれることがなかった。だれかのいわい日になると、きっとやってきて、心をこめてえらんだかわいい贈物おくりものをポケットからとりだした。だれもお礼をいうのをわすれるほどそれにれきっていた。彼のほうでは、贈物おくりものをすることがうれしくて、それだけでもう満足まんぞくしてるらしかった。けれど、クリストフはいつもよるよく眠れないで、夜の間に昼間ひるま出来事できごとを思いかえしてみるくせがあって、そんな時に、小父おじはたいへん親切しんせつな人だと考え、そのあわれな人に対する感謝かんしゃ気持きもちがこみ上げてるのだった。しかしひるになると、また彼をばかにすることばかり考えて、感謝かんしゃの様子などはすこしも見せなかった。その上、クリストフはまだちいさかったので、善良ぜんりょうであるということの価値かちが十分にわからなかった。子供こどもあたまには、善良と馬鹿とは、だいたい同じ意味いみの言葉とおもわれるものである。小父おじのゴットフリートは、そのきた証拠しょうこのようだった。
 あるばん、クリストフの父が夕食をたべに町にかけた時、ゴットフリートは下の広間ひろまに一人残っていたが、ルイザが二人ふたり子供こどもをねかしているあいだに、外にてゆき、少し先の河岸かしにいってすわった。クリストフはほかにすることもなかったので、あとからついていった。そしていつもの通り、子犬こいぬのようにじゃれついていじめた揚句あげく、とうとういきらして、小父おじの足もとのくさの上にねころんだ。はらばいになって芝生しばふに顔をうずめた。息切れがとまると、またなに悪口わるくちをいってやろうと考えた。そして悪口が見つかったので、やはり顔を地面じべたうずめたまま、わらいこけながら大声おおごえでそれをいってやった。けれどなんの返事もなかった。それでびっくりしてかおげ、もう一そのおかしな常談じょうだんをいってやろうとした。すると、ゴットフリートのかおが目の前にあった。その顔は、金色こんじきもやのなかにしずんでゆく夕日ゆうひの残りのひかりに照らされていた。クリストフの言葉はのどもとにつかえた。ゴットフリートは目をなかばとじ、口を少しあけて、ぼんやり微笑ほほえんでいた。そのなやましげな顔には、なんともいえぬ誠実せいじつさが見えていた。クリストフは頬杖ほおづえをついて、彼を見守みまもりはじめた。もうよるになりかかっていた。ゴットフリートのかおは少しずつえていった。あたりはひっそりとしていた。ゴットフリートの顔にうかんでる神秘的しんぴてきな感じに、クリストフも引きこまれていった。地面じめんかげにおおわれており、そらはあかるかった。ほしがきらめきだしていた。河の小波さざなみきしにひたひた音をたてていた。クリストフはがぼうとしてた。目にも見ないで、草の小さなくきをかみきっていた。蟋蟀こおろぎが一ぴきそばで鳴いていた。かれねむりかけてるような気持きもちだった。
 と突然とつぜんくらいなかで、ゴットフリートがうたいだした。むねの中でひびくようなおぼろなよわこえだった。少しはなれてたら、きとれなかったかも知れない。しかしその声には、人の心をまことがこもっていた。声にしてかんがえているのかと思えるほどだった。ちょうどきとおった水をとおして見るように、その音楽おんがくとおして彼の心の奥底おくそこまでもみとられそうだった。クリストフはこれまで、そんなふうな歌いかたをきいたことがなかった。またそんなうたいたこともなかった。ゆるやかな単純たんじゅん幼稚ようちな歌で、重々しいさびしげな、そして少し単調たんちょうな足どりで、決していそがずに進んでゆく――時々長い間やすんで――それからまた行方ゆくえもかまわず進みし、夜のうちにえていった。ごく遠いところからやってるようでもあるし、どこへくのかわからなくもあった。ほがらかではあるが、なやましいものがこもっていた。表面うわべは平和だったが、下には長い年月としつきのなやみがひそんでいた。クリストフはもういきもつかず、身体からだを動かすことも出来できないで、感動のあまりつめたくなっていた。歌が終わると、彼はゴットフリートのほうへはいった。そしてのどをつまらした声でいいかけた。
小父おじさん!……」
 ゴットフリートは返事へんじをしなかった。
小父おじさん!」とクリストフはくりかえして、両手とあごを彼のひざにのせた。
 ゴットフリートはやさしい声でいった。
なんだい……」
「それなんなの、小父おじさん。おしえてよ。小父さんが歌ったのなあに?」
「知らないね。」
なんだか教えとくれよ。」
「知らないよ。歌だよ。」
小父おじさんの歌かい。」
「おれのなもんか、ばかな……古い歌だよ。」
だれがつくったの?」
「わからないね。」
「いつ出来たの?」
「わからないね。」
小父おじさんの小さい時分じぶんにかい?」
「おれがまれるまえだ。おれのおとうさんが生まれる前、お父さんのお父さんが生まれる前、お父さんのお父さんのそのまたお父さんが生まれる前だ……。このうたはいつでもあったんだよ。」
へんだね! だれにもそんなこと聞いたことがないよ。」
 かれはちょっと考えた。
小父おじさん、まだほかのを知ってる?」
「ああ。」
「もう一つ歌って。」
「なぜもう一つ歌うんだい? 一つで沢山たくさんだよ。歌いたい時に、歌わなくちゃならない時に、歌うものなんだ。面白半分おもしろはんぶんに歌っちゃいけない。」
「でも、音楽おんがくをつくる時はどうなの?」
「これは音楽じゃないよ。」
 子供こどもは考えこんだ。よくわからなかった。けれど説明せつめいしてもらわなくてもよかった。なるほど、それは音楽おんがくではなかった。普通ふつうの歌みたいに音楽ではなかった。彼はいった。
小父おじさん、小父さんはつくったことある?」
「何をさ。」
「歌を。」
「歌? どうして歌をつくるのさ。歌はつくるものじゃないよ。」
 子供こどもはいつもの論法ろんぽうでいいはった。
「でも、小父おじさん、一だれかがつくったにちがいないよ。」
 ゴットフリートはがんとして頭をった。
「いつでもあったんだ。」
 子供はいいすすんだ。
「だって、小父おじさん、ほかの歌を、新しい歌を、つくることは出来できるんじゃないか。」
「なぜつくるんだ。もうどんなのでもあるんだ。かなしい時のもあれば、うれしい時のもある。つかれた時のもあれば、遠いいえのことを思う時のもある。自分がいやしい罪人つみびとだったからといって、まるでむしけらみたいなものだったからといって、自分じぶんの身がつくづくいやになった時のもある。ほかの人が親切しんせつにしてくれなかったからといって、きたくなった時のもある。天気がよくて、いつも親切にわらいかけて下さる神様かみさまのような大空おおぞらが見えるからといって、楽しくなった時のもある。……どんなのでも、どんなのでもあるんだよ。なんでほかのをつくる必要ひつようがあるものか。」
えらい人になるためにさ……」と子供こどもはいった。彼の頭は、祖父そふおしえと子供らしいゆめとで一ぱいになっていた。
 ゴットフリートはおだやかにわらった。クリストフは少しむっとしてたずねた。
「なぜわらうんだい!」
 ゴットフリートはいった。
「ああ、おれは、おれはつまらない人間さ。」
 そして子供こどもの頭をやさしくでながらきいた。
「お前は、えらい人になりたいんだね?」
「そうだよ。」とクリストフは得意とくいげに答えた。
 彼はゴットフリートがほめてくれるだろうと思っていた。しかしゴットフリートはきき返した。
なんのためにだい?」
 クリストフはまごついた。そして、ちょっとかんがえてからいった。
立派りっぱな歌をつくるためだよ。」
 ゴットフリートはまたわらった。そしていった。
えらい人になるためにうたをつくりたいんだね。そして、歌をつくるために偉い人になりたいんだね。それじゃあ、尻尾しっぽっかけてぐるぐるまわってるいぬみたいだ。」
 クリストフはひどくにさわった。ほかの時だったら、いつもばかにしている小父おじからあべこべにばかにされるなんて、我慢がまんが出来なかったかもしれない。それにまた理窟りくつで自分をやりこめるほどゴットフリートが利口りこうだなどとは、思いもよらないことだった。かれはやり返してやる議論ぎろん悪口あっこうを考えたが、思いあたらなかった。ゴットフリートはつづけていった。
「もしお前が、ここからコブレンツまであるほど大きな人物じんぶつになったところで、たった一つの歌もつくれやすまい。」
 クリストフはむっとした。
「つくろうとおもっても……」
おもえば思うほど出来できなくなるんだ。歌をつくるには、あの通りでなくちゃいけない。おききよ……」
 月は野の向こうにのぼって、まるくかがやいていた。銀色ぎんいろもやが、地面じめんとすれすれに、またかがみのような水面すいめんただよっていた。かえるが語りあっていた。牧場まきばの中には、美しい調子ちょうしふえのようながまのなく声が聞えていた。蟋蟀こおろぎするどふるえ声は、星のきらめきにこたえてるかのようだった。かぜしずかにはんえだをそよがしていた。河の向こうの丘からは、うぐいすのか弱い歌がひびいてきた。
「いったいどんなものを歌う必要ひつようがあるのか?」ゴットフリートは長い間だまっていてから、ほっといきをしていった。――(自分じぶんに向かっていっているのか、クリストフに向かっていっているのか、よくわからなかった。)――「おまえがどんなうたをつくろうと、ああいうもののほうが一そう立派りっぱに歌っているじゃないか。」
 クリストフはこれまで何度なんども、それらのよるの声を聞いていた。しかしまだこんなふうに聞いたことはなかった。本当ほんとうだ、どんなものを歌う必要ひつようがあるか?……彼はやさしさとかなしみでむねが一ぱいになるのをかんじた。牧場まきばを、河を、空を、なつかしいほしを、むねきしめたかった。そして小父おじのゴットフリートにたいして、しみじみと愛情あいじょうおぼえた。もう今は、すべての人のうちで、ゴットフリートがいちばんよく、いちばんかしこく、いちばん立派りっぱに思われた。彼は小父おじをどんなに見違みちがえていたことかと考えた。自分じぶんから見違えられていたために、小父はかなしんでいるのだと考えた。彼は後悔こうかいねんにうたれた。こうさけびたい気がした。「小父さん、もう悲しまないでね。もう意地悪いじわるはしないよ。ゆるしておくれよ。僕は小父おじさんが大好きだ!」しかしかれはいえなかった。――そしていきなり小父おじうでの中にとびこんだ。言葉はなかった。彼はただくりかえした。「ぼく小父おじさんがきだ!」そして心をこめてきついた。ゴットフリートはびっくりし、感動かんどうして、「なんだ、何だ?」とくりかえしながら、おなじように彼をきしめた。――それからかれ立上たちあがり、子供こどもの手をとっていった。「もううちへかえろう。」クリストフは自分じぶん気持きもち小父おじにはわからなかったのではないかしらと、またかなしい気持になった。しかしうちのところまでると、小父はいった。「またばんに、お前さえよかったら、一しょに神様かみさま音楽おんがくをききに行こう。もっとほかのうたも歌ってあげよう。」そしてクリストフは、感謝かんしゃ気持きもちで一ぱいになって、おやすみの挨拶あいさつをしながら、きついた時、小父がよくわかってくれたのを見てとった。
 それ以来いらい二人ふたり夕方ゆうがた、しばしば一しょに散歩さんぽかけた。だまって歩いて、河に沿っていったり、野を横切よこぎったりした。ゴットフリートはゆっくり煙草たばこをすい、クリストフは夕闇ゆうやみこわくて、小父おじに手をひかれていた。彼等かれらはよく草の上にすわった。ゴットフリートはしばらくだまってたあとで、ほしくもはなしをしてくれた。つち空気くうきや水のいぶき、またはやみの中にうごめいてる、んだりはったりおよいだりしているちいさな生物いきものの、歌やさけびや音、または晴天せいてんや雨の前兆ぜんちょう、またはよる交響曲シンフォニーかぞえきれないほどの楽器がっきなど、それらのものを一々聞きわけることを教えてくれた。時とすると、うたもうたってくれた。かなしいふしの時も楽しい節の時もあったが、しかしいつもおなじような種類しゅるいのものだった。そしてクリストフはいつも同じせつなさをかんじた。ゴットフリートは一ばんに一つきり歌わなかった。たのんでも気持きもちよく歌ってはくれないことを、クリストフは知っていた。歌いたい時に自然しぜんてくるのでなくてはだめだった。長い間っていなければならないことが多かった。※(始め二重括弧、1-2-54)もう今夜こんやは歌わないんだな……※(終わり二重括弧、1-2-55)とクリストフが思ってるころ、やっと小父は歌いすのだった。
 あるばん、ゴットフリートがどうしても歌ってくれそうもなかったとき、クリストフは自分じぶんつくった小曲しょうきょくを一つかれに聞かしてやろうと思いついた。それはつくるのに大へんほねが折れたし、得意とくいなものであった。自分がどんなに芸術家げいじゅつかであるか見せてやりたかった。ゴットフリートはしずかにみみかたむけた。それからいった。
じつにまずいね、どくだが。」
 クリストフは面目めんぼくうしなって、答える言葉ことばもなかった。ゴットフリートはあわれむようにいった。
「どうしてそんなものをつくったんだい。どうにもまずい。だれもそんなものを作れとはいわなかったろうにね。」
 クリストフはおこって赤くなり、いいさからった。
「お祖父じいさんは僕の音楽おんがくをたいへんいいといってるよ。」と彼はさけんだ。
「そう!」とゴットフリートは平気へいきでいった。「お祖父じいさんのいうことが本当ほんとうなんだろう。あの人はたいへん学者がくしゃだ。音楽のことはなんでも知っている。ところがおれは、音楽のことはあまり知らないんだ。」
 そして少しをおいていった。
「だが、おれは、たいへんまずいと思うよ。」
 かれはおだやかにクリストフをながめ、その不機嫌ふきげんな顔を見て、微笑ほほえんでいった。
なにかほかにつくったのがあるかい? 今のよりほかのものの方が、おれのにいるかも知れない。」
 クリストフはほかのうた小父おじの感じをかえてくれるかも知れないと思って、あるだけ歌った。ゴットフリートはなんともいわなかった。彼はおしまいになるのをっていた。それから頭をって、ふかい自信じしんのある調子ちょうしでいった。
「なおまずい。」
 クリストフはくちびるをかみしめた。あごがふるえていた。かれきたかった。ゴットフリートは自分でもまごついてるようにいいはった。
じつにまずい。」
 クリストフは涙声なみだごえさけんだ。
「では、どうしてまずいというんだい?」
 ゴットフリートはあからさまのつきで彼をながめた。
「どうしてって……おれにはわからない……おちよ……じっさいまずい……第一、ばかげているから……そうだ、そのとおりだ……ばかげている、なん意味いみもない……そこだ。それを書いた時、お前はなにきたいことがなかったんだ。なぜそんなものを書いたんだい?」
らないよ。」とクリストフはかなしい声でいった。「ただうつくしいきょくを作りたかったんだよ。」
「それだ。お前はくために書いたんだ。えら音楽家おんがくかになりたくて、人にほめられたくて、書いたんだ。お前は高慢こうまんだった、お前はうそつきだった、それでばつをうけた……そこだ。音楽では、高慢こうまんになってうそをつけば、きっとばちがあたる。音楽は謙遜けんそん誠実せいじつでなくてはならない。そうでなかったら、音楽おんがくというのはなんだ? 神様に対する不信ふしんだ、神様をけがすことだ、正直しょうじき真実しんじつなことをかたるために、われわれに美しい歌を下さった神様をね。」
 彼はクリストフがかなしがってるのに気がついて、いてやろうとした。しかしクリストフはおこって横を向いた。そして彼は幾日いくにち不機嫌ふきげんだった。小父おじにくんでいた。――けれども、「あいつはばかだ、なんにも知るもんか! ずっとかしこいお祖父じいさんが、僕の音楽をすてきだといってくれてるんだ。」といくら自分でくりかえしてみてもだめだった。心のそこでは、小父のほうただしいとわかっていた。ゴットフリートの言葉がむねおくきざみこまれていた。彼はうそをついたのがはずかしかった。
 それで、彼はしつっこくうらんではいたものの、作曲さっきょくをする時には、今ではいつもゴットフリートのことをかんがえていた。そしてしばしば、ゴットフリートがどうおもうだろうかと考えると、はずかしくなって、いたものをやぶいてしまうこともあった。そういう気持きもちをおしきって、全く誠実せいじつでないとわかっているきょくを書くような時には、をつけてかくしておいた。どう思われるだろうかとびくびくしていた。そしてゴットフリートが、「そんなにまずくはない……にいった……」とただそれだけでもいってくれると、うれしくてたまらなかった。
 また、時には意趣いしゅがえしに、えらい音楽家のきょくを自分のだとうそをいって、たちのわるい悪戯いたずらをすることもあった。そして小父おじがたまたまそれをけなしたりすると、彼はこおどりしてよろこんだ。しかし小父おじはまごつかなかった。クリストフがをたたいて、よろこんでまわりをはねまわるのをながら、人がよさそうに笑っていた。そしていつもの意見いけんをもちした。「うまくは書いてあるかも知れないが、なん意味いみもない。」――彼はいつも、クリストフの家でもよおされる小演奏会しょうえんそうかい出席しゅっせきしたがらなかった。その時の音楽おんがくがどんなに立派りっぱなものであっても、彼は欠伸あくびをしだし、退屈たいくつでぼんやりしてる様子ようすだった。やがて辛抱しんぼう出来なくなり、こっそりしてしまうのだった。彼はいつもいっていた。
「ねえ、ぼうや、お前がいえの中で書くものは、どれもこれも音楽おんがくじゃないよ。家の中の音楽は、部屋へやの中の太陽たいようと同じだ。音楽はいえそとにあるものなんだ、外で神様のさわやかな空気くうきときなんかに……。」

  あとがき
 クリストフはそのえら音楽家おんがくかになりました。かれ音楽おんがくはいつも、かれ思想しそう感情かんじょうをありのままに表現ひょうげんしたもので、かれこころとじかにつながってるものでありました。そしてかれがえらい音楽家おんがくかになったのは、ゆたかな天分てんぶんくるしい努力どりょくとによるのですが、またおさなときにゴットフリートからけた教訓きょうくんは、ふかくこころにきざみこまれていて、たいへんかれのためになりました。





底本:「日本少国民文庫 世界名作選(一)」新潮社
   1998(平成10)年12月20日発行
底本の親本:「世界名作選(一)」日本少國民文庫、新潮社
   1936(昭和11)年2月8日
入力:川山隆
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年1月15日作成
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